牛尾キャプテン日記
新入部員と顔合わせした日
今日は新入部員達との顔合わせだった。
なんだかクセの強そうな奴が多い。服装などについては特に何も言うつもりはないが(というより人のことは言えないが)、トンボがけしていたら「チェリオ買ってきて」などと声をかけてきた奴、元気一杯なのはいいが落ち着きのない奴、自己紹介しろと言ってるのに無言で手を上げる奴・・・先が思いやられる。大体、新しく来た監督からしていきなり「金貸してくれ」というのが頭が痛い。他の部員が巻き上げられないように(あの監督ならやりかねない)、思わず率先して貸してしまった。4000円、返してもらえるだろうか。借用書を書いてもらわなかったのが悔やまれる。キャプテンは自分だと思うとつい他の部員をかばってしまうのだが、いい加減無駄な自己犠牲はやめにしたい。
新監督の方針として、競争力を部内から養うというものがあるらしい。ポジション別のランキングが今日発表された。どうでもいいが、監督は何を判断基準にしてあれを作ったのだろう。ランキング内容に特に不満はないが、それだけは疑問だ。
しかし今日一番驚いたのは、僕に「チェリオ買ってきて」と言い放った奴が伝説を破った噂の人物だったということだ。そうか、あの尊大な態度は「自分は覇者だ」という自覚からか。確かに伝説を破ったのはすごいことだが、だからと言って他者を顎で使うようなことが許される訳はない。彼、猿野くんにはまず人間性から磨いてもらいたいところだ。
人間性と言えば、自己紹介できなかった奴、司馬くんもどうにかした方が良い。世の中の何をそんなに恐れているのか知らないが、人前で喋れないスポーツマンなど初めて見た。運動部はまずは声を張り上げることから練習させられるようなものなのに、中学時代はどうしていたのだろう。あの調子でぼーっとしていたのだろうか。・・・いたのだろうな。彼の先輩だった人達(僕と同学年もいるだろうが)に同情する。ちなみに彼の自己紹介で、隣に立っていた兎丸くんという小さい子が代わりに喋っていたが、なんだか鹿目&三象コンビから毒を抜いた感じがして微笑ましい。いつまでも毒のないままでいてほしいものだが。
そういえば、趣味は自分探しという奴もいたな。犬飼くんと言ったか。変な宗教や勧誘にひっかからないように気をつけてもらいたいものだ。
今日は久しぶりに競馬メニューを実施した。毎度のことながら、新入部員はこのメニューをなめてかかる。案の定、今回も脱落組は多かった。そんな中、闘争心丸出しでゴールしてきたのは例の猿野くんペアと犬飼くんペアだった。どうやらこの二人は仲が悪いらしい。途中で何があったか知らないが、猿野くんが流血していたのにはちょっと驚いた。犬飼くんと殴り合いでもしたかと一瞬驚いたが、どうやら違うらしいので安心した。彼のことだから途中で転んだか壁に激突したかでもしたのだろう。喧嘩でなければまあ良い。特に猿野くんは血が多そうなので、少しくらい減った方が良いと思う。
しかし彼らがゴールした時に虎鉄くんが猿野くんに絡みだし、リアルファイトになりそうで内心ヒヤリとした。とりあえず主将として諌めておいたが、個人的な意見としては、虎鉄くんの感想に全く同感だった。こんな時、主将という立場が憎い。だんだん自分が嫌な意味で大人になってしまう気がする。しかし蛇神くんは、なぜあんな時にも笑っているだけなのか。力いっぱい仏教徒のはずなのに。彼は本当は仏教徒でもなんでもないのではないかと最近疑い始めている。
ともかく、明日からトラブルが増大しそうな予感でいっぱいだ。気をしっかり持とう。
ゆずり葉という名を持つ木がある
古い葉は新しい葉が生まれてから落ちるという
地に落ちた葉は 自分のいた場所に伸びはじめる新しい葉を見て
悲しむのだろうか 安堵するのだろうか
地に落ちる前の葉は 新しい葉の生まれる予感を感じたとき
悲しむのだろうか 喜ぶのだろうか
新しい葉を憎むこともあるのだろうか
新しい葉の成長に不安を感じることはないのだろうか
新しい葉よ健やかなれ
古い葉の想いを知れ