牛尾キャプテン日記
合宿4日目
~ 合宿4日目 ~
合宿4日目が終了した。
今日は、自分の練習はほとほどに切り上げて、蛇神くんと一緒に一年生たちの練習を見回ってみた。敵陣視察……というより、昨日伊豆に到着した梅星くんが大騒ぎするので、練習に身が入らないというのもあったが。
昨日の監督の発表の後の練習はランニングと投球練習のみにしたので、梅星くんが騒いでいてもあまり気にならなかったが、ノックやバッティングではやはり騒がれると気が散って困る。あまり度がすぎるようなら注意しなければと思うが、本音を言えば梅星くんとはあまり直接の会話はしたくない。何を言っても「素敵ですわ!!」やら「その眉間のシワもスッパ抜きよ~」などと叫んで写
真を撮るので話にならない。ちなみに至近距離でも構わずフラッシュをたくのでまぶしいことこの上ない。人の話を静かに聞いてほしいと思うが、一言話す度に黄色い声をあげるので、しまいには精神力が0になってしまう。もしかしたらバカにされているのだろうか。考えたらだんだん腹が立ってきた。
一年生の練習も、大半はランニングやバッティングなどの基礎的なものだったが、中には個性的な練習を行っている者もいた。特に、司馬くんなどは至近距離での3球同時ノックという無茶なメニューを組んで頑張っていた。何度も球に当たって苦しんでいたが、最後には見事すべての球をキャッチして見せたのには驚いた。蛇神くんに「どうだい彼は?」と聞いてみたところ、「まこと愉快也……試合の日が心待ちである」という返事が返ってきた。楽しそうに笑っていたので、本当に楽しみなのだろうと思う。考えてみたら、蛇神くんは3年になってからは競争相手も特にいないままショートのポジションをキープし続けていて、向上心を刺激されることがあまりなかったのではないだろうか。一人でも十分切磋琢磨できる人だったからここまで来れたが、ライバルが身近にいればもっともっと伸びることができるかもしれない。そう思うとなんだかわくわくすると同時に、いつぞやの屋上からのボールキャッチのようなキテレツな特訓が増えるのではないかと脅える自分がいる。主よどうか、蛇神くんがごくまっとうな練習に励んでくれますように。
自分の長所の強化に励んでいる司馬くんとは対照的に、猿野くんはカーブ打ちの練習に励んでいた。猿野くんの友人の報道部員も手伝っているおかげか、だんだんと上達してきているようだ。なかなか彼もガッツがあると感心していたら、虎鉄くんや鹿目くんたちが集まってきた。どうやらみんな、対戦相手の練習に興味しんしんらしい。その後、みなで他の一年生たちも見て回ったが、みなそれぞれ、自分の弱点の克服や長所の強化に努力している姿が伺えた。対戦相手として、というよりチームメイトとして興味深い限りだ。
明日も練習に頑張ろう。
一年生たちの頑張りを見ていたら、そういう前向きな気持ちになれた。
そのためには、梅星くんにも自粛してもらわないといけないな……なんだかまた気分が重くなってきた。一晩眠ればすっきりするといいのだが。
伸び始めた若芽は 己も伸びようと懸命だ
まだ柔いその身は 暖かい陽を透かして輝いている
若芽たちとともに伸びていきたい
健やかに まっすぐに
強く つよく