話にならない話
うお正の息子の憂鬱
学校の近くのアパートで一人暮らしをしている鑑恭介16歳は、下校途中に近くの商店街で買い物をするのが日課だった(この辺で既にアウトな感じ)。
高校生でありながら一人暮らし、という点でまず何か家庭の事情を感じさせるところにもってきて、買い物の品目を見ると、どうやらまめに自炊なんかもしているらしい。若いものの一人暮らしにありがちな、悪友のたまり場になっている様子もない。無意味に目立つ服装の割には真面目で礼儀正しい物腰。聞けば、学校では風紀委員だという。これだけでも日本のおっちゃんおばちゃんの高感度ゲージはかなりMAXに近いというのに、とどめにあの花のような笑顔である。うっかりと消費税なんかまけてやった時に「ありがとうございます」なんてにっこりして言われてみろ。そりゃもう大変である。アイドルである。木村拓哉が誰とつきあってようと気にもならないが、鑑恭介のこととなると目の色が変わるおばちゃんが商店街に急増しても不思議はない。
「うお正」の店長夫婦もそんな人種の一員で、「恭介ちゃん、恭介ちゃん」とまるで息子のように可愛がっていた。自分たちにも息子がいるにも関わらず。しかもその息子は恭介と同じ学校に通っており、恭介より一つ上の2年生であった。この夫婦は恭介が店に来る度に何かしてやらねば気が済まないらしく、おっちゃんの方は値引いてやったりおまけをつけてやったりし、おばちゃんの方は「作りすぎちゃってねぇ」などと言いながら漬物だの煮物だのを持たせてやったりしていた。客なんだか親戚の子なんだかよく判らない扱いである。というか今どきそんなお人よしがおるかと思われるかもしれないが、気にしちゃ負けだ。頑張れ自分。……・それはともかくとして、恭介の方では、あまりにも世話を焼かれることに対しなんだか申し訳ないような気持ちになって、あまりうお正の前を通らないようにしていた。もっとも、あまり避けてもそれはそれでうお正夫婦に申し訳ないので、時々は買い物もしていたが。微妙なところである。なんでそんなつまんないことで我らが鑑恭介が悩まなくてはならないのかと詰問されると困るが。しょうがないじゃないか、そういう生活をしているように見えるんだ私には(逆ギレ)。
しかしながら、この状況にため息をついている者も少ないながら存在した。商店街に店を構える家庭の子供たちである。主に中高生。小学生以下にとってはまあ「ふーん」ですむような話だが、微妙なお年ごろでもある中高生にとってはたまらない。親は何かにつけ恭介の話を持ちだし、揚げ句の果てには「あんな若い子でもきちんと一人で暮らしてるんだからねぇ。あんたもしっかりしな!!」などと余計なことまで言われる。同じ学校だったりした場合には最悪である。「ほんとに恭介ちゃんは、真面目だし今時珍しいくらい礼儀正しい子だよねぇ。おまけに勉強も運動もできるんだって?親御さんは鼻が高いねえ、うらやましいよ」こんな台詞をことあるごとに聞かせられるのである。たまったものではない。
うお正夫婦の息子、コウジも例外ではなく、ごく普通の頭脳とごく普通の運動神経とごく普通 の顔面を遺伝子に持った彼は、その遺伝子の譲り主であるはずの親から鑑恭介と比較される度にうんざりしていた。それはうんざりもしよう。遅刻常習者の彼にとってはただでさえあの太陽学園名物風紀委員は目障りな存在であるにも関わらず、奴はこちらをうお正夫婦の息子だと知っていて、遅刻チェックで顔を合わせる度に、何か申し訳ないような表情になるのが苛立たしい。おまけに廊下なんかですれ違うと会釈なんかされたりするのである。しかも笑顔で。その度に周囲から「お前、あいつとなんかあんの?」とか不思議そうに聞かれたりするのがまたうっとおしい。要するに、コウジにとって恭介に関わることはうっとおしいことばかりなのである。
そんなある日、いつものように学校に遅刻したコウジは、例の風紀委員の姿が見えないのに気づいた。聞けば、今日は風邪をひいて休みだという。情報の早い学校だ。とにかく、奴にさえつかまらなければ遅刻してもさほどの面倒はないので、小さな幸運に喜びつつ一日を過ごした。だがそれはあまりにもささやかな幸運であった。家に帰ってみると、彼の小さな喜びを踏みにじるがごとくな命令が待っていたのである。「恭介ちゃん、風邪ひいて学校休んだんだって?かわいそうに、あんたこのおかず、届けてってやんな!!」……どうして母親という生き物はこうも傍若無人なのであろうか。そして諜報部員並に情報が早いのにも驚かされる。ていうかどこから仕入れたんだ、そんな情報。などという疑問や怒りをぶつける間も無く、コウジは強制的に恭介の住むアパートまで派遣されてしまった。「なんでアパートの場所なんか知ってるんだ」というのは愚問である。なんたって近所の商店街なんである。商店街の話し好きのおばちゃんおっちゃんが「家、どこなの?」なんて聞かないはずがない。そして近所なんだから、「○○荘なんです」(「荘」か、よりによって……)と言えば「ああ、あそこね」とすぐ判ってしまう。と言う訳で、うお正の息子であることをこれまでにない程恨みつつ、コウジは母親がわざわざ恭介の為に作ったと思われるおかずを手に、恭介の部屋をノックするはめに陥ったのであった。
ノックしてしばらく、何の返答もなくいきなり部屋の扉が開いた。ああもう、なんて言えばいいんだよちくしょう。などと内心毒づきつつ「あのー」と顔を上げて驚いた。目の前にいるのは鑑恭介ではなく、めったやたらと体格の良い外人であった。うわあああ、なんで外人!?コウジくん大パニックである。扉に出てる表札を見直しても「鑑」となっている。じゃあこいつは鑑の客なのか。遊びに来るのが外人なんて、奴はやっぱ普通と違うな、などとのんびり思っている場合ではない。日本語通じるのか!?俺英語の成績、2なんだけど。とりあえず、鑑を呼んでもらえればそれでいいんだけど……などとコウジ脳フル回転中に、外人が口をきいた。
「……なにか?」
流暢な日本語である。ありがたくて涙が出そうだった。その口調が横柄であったとしても、英語よりはましだ。
「ええと、あの鑑……くん、いますか」とおそるおそる聞いてみたら、外人の目つきが険しくなった。もとからあまりよろしくない目つきが更にきつくなり、さっきから萎縮しっぱなしなコウジには非常に辛い。
「名乗りもせずに取り次げとは随分失礼だな」腕組みしつつそんな風に言われてしまうと、一層辛い。「お前だって相当横柄じゃないかさっきから!!」よほどそう言ってやりたかったがすっかり気迫で負けていて、ただ外人を見つめ返すしかできないコウジであった。
すっかり雰囲気が悪くなったところで、部屋の奥から聞き覚えのある声がした。
「どうした……誰か来てるのか」
風邪声ではあるが、確かに鑑恭介の声である。と、外人が振り返りながら返答した。
「客が来てるぞ……誰だか知らないが」その声に応えるように姿を表した恭介は、えらく驚いた様子だった。
「正岡先輩……どうしたんですか」おお、正岡というのかうお正は。遅刻なんかするから名前までばれるんだよ、コウジくん。などというのはともかく、Tシャツと薄手のパンツという格好で棒立ちになっている恭介に向かって、外人は「先輩?年上な割には物事の順序を知らない奴だな」などと言い放った。なんだか余程御立腹なようである。これには流石に恭介も表情を強張らせた。鋭い口調で「ロイ!!」と嗜めたが、コウジはもうできるだけ早くこの場を離れることしか頭になく、「いやあの、これ……ウチのお袋が持ってけって……」とだけ言うと、持ってきた皿を恭介におしつけて「それじゃ」と逃げるようにして去った。
ほんとに鑑恭介に関わるとろくなことがない。母親になんと言うべきか、いやいや何も言わずにいよう。この不快な出来事は一刻も早く忘れたい。鑑とあのロイとかいう外人がどういう友人なのかなんて知りたくもない。忘れるったら忘れてやる!!半ば走るようにして家路をたどりながら、うお正の息子の憂鬱は深まるばかりであった。
……えーと……。オチ、ないですね。
すいません。そして甚だしくオフィシャル無視です。
恭介はアパート住まいですよ。安売りの赤チラシが好きで、スーパーとかで値引き商品を買います。
貧乏というより、慎ましく生活するのが趣味なんですよ、ええ。銭湯にも通ってますよ。常連のトメさん64歳と妙に仲がいいです。Hシーンとかは全く想像できないくせに、こんなところはいくらでも考えられますよ。嬉々として。
そしてまた、 「そんな、なんで無意味にロイ恭なんだ」と言われてもどうにもなりません。 だってロイ恭サークルのバカ2人組の会話で生まれたネタなんですよ。ロイ恭にならなくてどうするんですか(逆ギレ気味)。というか、ほんとにこれ「話にならない話」としか言い様がないでしょう?これをどうしろという、という感じです。捨てちまえこんなネタ、という感じですが、なんか好きなんですよこういうの……(泣)。いやあの、商店街のおっちゃんおばちゃんがね。
それにしても、文章能力のないマンダラが書いたもんで非常に読みにくくなってしまってて申し訳ないです。
ほんとは文章は雲陀羅(ヤスヒサ)氏に書いてもらいたいのですが。カットもひどいですね。4こんなラフ画を人に見せるなよ、と自分でも思いますが、このページ自体がもうジャンクぶっちぎりですもので御容赦の程。